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新しい日本酒を追い続けて

2005年度 白鶴錦日記 醸造編

2006年3月下旬

各蔵で大吟醸酒造りが一段落したころ、昨年収穫した白鶴錦で初めて実醸造レベルでの試験醸造を行ないました。今回、研究開発室の白鶴錦育成担当者も蔵に入り、蔵の従業員、蔵人と一緒に作業を行いました。

精米(せいまい)

今回の試験醸造用の白鶴錦は精米歩合が70%になるように精米しました。

精米(せいまい)・浸漬(しんせき)

洗米は、米を洗うことで、基本的には、ご飯を炊く前の米洗いと同じで主な目的は、米の表面の糠を洗い落とすことです。まず、精米した白鶴錦をメッシュのナイロン袋に入れ、水(水温10℃)を溜めた小さな桶に白鶴錦の入ったナイロン袋を入れ、ゆっくりと左右に動かしながら米を洗いました(写真1)。

洗米の時間はわずか1分間だったのですが、作業を行なっていくうちに手が冷たくなり1分間がとても長いように感じます。その後、上からシャワーで水をかけ余分な糠を落としました(写真2)。

  • (写真1) 洗米
    (写真1) 洗米
  • (写真2) シャワーで余分な糠を落とす
    (写真2) シャワーで余分な糠を落とす

洗米が終わった米は、ナイロン袋のまま水を溜めた小さな桶につけました(写真3 浸漬)。浸漬とは、米を水に漬けることで、米に水分を吸い込ませます。浸漬は後の蒸米の良否を左右するため、目標どおりに米に水を吸わせることが出来るかどうかが一番重要です。そのため、非常に神経を使う作業と言えます。
浸漬後、ナイロン袋に入れたままつるして水切りを行ない(写真4)、板の上に載せ一晩置きます。この水切りが十分でないと蒸米がべたつき、軟くなります。水切り後、米の重さを量りどのくらい水を吸ったか確認したところ「白鶴錦」は「山田錦」よりやや重く、吸水性の良い米でした。

  • (写真3) 浸漬
    (写真3) 浸漬
  • (写真4) 水切り
    (写真4) 水切り

蒸米(むしまい)

蒸米は、甑(こしき)という大きな釜で蒸します(写真5)。水切り後一晩置いた白鶴錦を甑の中に均一になるように入れ、約1時間蒸しました。蒸しあがると、スコップで甑から蒸米を取り出し、かごに入れ(写真6)、麻布を敷いた床に置き、所定の温度になるまで冷却しました(写真7)。この時、早く冷却させるために蒸米を薄く広げ、中の水分を飛ばすように蒸米のかたまりをほぐしていきます(写真8)。蒸しあがり直後はとても熱く、かたまりをほぐしていくのは大変な作業です。

  • (写真5) 甑(こしき)
    (写真5) 甑(こしき)
  • (写真6) 蒸し上がった米を甑からかごに移す
    (写真6)
    蒸し上がった米を甑からかごに移す
  • (写真7) 麻布の上に蒸米を置き薄く広げる
    (写真7)
    麻布の上に蒸米を置き薄く広げる
  • (写真8) 蒸米のかたまりをほぐす
    (写真8) 蒸米のかたまりをほぐす

製麹(せいきく)

米麹(こめこうじ)を造る作業を製麹と言います。適温に放冷した蒸米を麹室(こうじむろ)(写真9)に運び込み、うすく広げ(写真10)、種こうじ(麹菌の胞子:醸造業界ではもやしと呼ぶ)をふるいに入れ、蒸米にまんべんなく振りかかるように散布します(写真11)。さらに、麹菌が蒸米に均一に付着するように蒸米をよく揉みます(床もみ)。床もみ後、蒸米を積み上げ、布でくるみ保温しました(写真12)。これは水分蒸発による品温の低下、蒸米表面の乾燥を防ぐためです。(表面が乾燥すると麹菌が増殖しなくなる。)製麹は温度と湿度で管理し、麹菌の増殖と酵素の生産を調整します。

  • (写真9) 麹室(こうじむろ)
    (写真9) 麹室(こうじむろ)
  • (写真10) うすく蒸米を広げる
    (写真10) うすく蒸米を広げる
  • (写真11) 種こうじの散布
    (写真11) 種こうじの散布
  • (写真12) 床もみ後、蒸米を積み上げ布をかぶせる
    (写真12) 床もみ後、蒸米を積み上げ
    布をかぶせる

床もみから約19時間後、積み上げた蒸米をくずして温度、湿度を均一にしました(写真13)。その後、箱の上に麻布を敷き、その上にかたまりをほぐした蒸米を一定量ずつ入れ(写真14)、棚に並べ、布をかぶせました(写真15、16)。この時点で1〜2割のはぜが見られました。はぜとは麹菌が増殖し、蒸米上に菌糸が白く見える状態のことです。はぜの程度と状態は製麹における麹菌の増殖の管理指標になっています。

  • (写真13) 積み上げた蒸米をくずす
    (写真13) 積み上げた蒸米をくずす
  • (写真14) 箱に入れた蒸米
    (写真14) 箱に入れた蒸米
  • (写真15) 棚に蒸米の入った箱を並べる
    (写真15) 棚に蒸米の入った箱を並べる
  • (写真16) 箱全体を布で覆う
    (写真16) 箱全体を布で覆う

その後、箱内の温度の均一化および品温上昇を抑えるため手入れ(箱内の麹をかき混ぜること)、積替え(箱の位置を上下中外入れ替える)を何回も行ないました(写真17)。この作業は、夜中にも行なうためほとんど寝る暇はありません。そして、種切りから約44時間で製麹を終了し、麹を麹室の外に運び出し、低温の場所で広げて冷ましました(写真18 出麹)。このことで麹菌の増殖を止めます。約2日間かかり、やっと米麹が出来ました。
手作業での製麹は機械製麹に比べ、製麹時間が長く、昼夜問わず品温、湿度管理をしなければならないので、多くの時間と労力が掛かります。今回の製麹はそれだけ思い入れのある米麹が出来たと思っています。

  • (写真17) 麻布の上に蒸米を置き薄く広げる
    (写真17) 麻布の上に蒸米を置き
    薄く広げる
  • (写真18) 出麹・放冷
    (写真18) 出麹・放冷

仕込み

仕込みは米(白鶴錦)の特徴が出る純米酒仕込みを行ないました(写真19)。また、200kgという小さな仕込みなので、酒母をとらない酵母仕込みの三段仕込みで行ないました。酵母は純米酒製造に適したものを選択しました。
留5日目ぐらいまでは米が溶けていないため、かき混ぜにくく、まだ米粒がしっかり見えます(写真20)。

  • (写真19) 仕込み作業
    (写真19) 仕込み作業
  • (写真20) 留添後2日目
    (写真20) 留添後2日目

留後5日間以降から次第に醪(もろみ)から泡が出てきて、「プチ、プチ」と酵母が発酵している音が聞こえ始めてきました(写真21)。その後、発酵が進むにつれて、醪の流動性が増し、米が溶けているのが良く分かるようになります。醪の管理は、日本酒度とアルコールの出方を見ながら温度操作で行ないます。
留添後18日(添から数えて22日目)(写真22)で醪を圧搾機で搾りました。現在、搾ったお酒はろ過し、酒中の酵素を失活させるために火入れを行って貯蔵しています。貯蔵は秋まで行なう予定です。貯蔵熟成させることによって香味が整い、味もまるくなり酒質の向上が期待できます。新酒での白鶴錦純米酒の評価は上々で、熟成させた白鶴錦の純米酒がどのようにおいしくなるのか今から楽しみです。
今回の仕込みは吟醸酒を醸造する時と同じように、洗米からすべて手作業で行なったので、担当者の思いを込めた試験醸造が出来ました。
来年以降はさらに大きいスケールでの実醸造に移ります。また、それにあわせて平成18年度の白鶴錦の栽培は、山田錦発祥の地とされている兵庫県多可郡多可町中区において、これまでの試験栽培よりも大きいスケールで行います。栽培の詳細については次号に掲載します。

  • (写真21) 留添後6日目
    (写真21) 留添後6日目
  • (写真22) 留添後18日 上槽前の醪
    (写真22) 留添後18日 上槽前の醪

幻の酒米「山田穂」

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