由良港　赤ウニ編｜白鶴丸が行く｜白鶴まる

更新日：2023/2/15

日本古来から平安時代まで「御食国」として朝廷に海産物を納めてきた淡路島。
今も変わらず、上質な食材の宝庫として知られています。
淡路島には数々の漁港がありますが、中でも「極上品が水揚げされる港」として全国にその名を轟かせている漁港があります。
淡路島の東南、兵庫県洲本市にある「由良（ゆら）港」です。

「食通が唸る　由良の天然赤ウニ」

淡路島の海産物の中でも極上品とされる「由良のハモ」に並んで、美食家の注目の的になっているのが「由良の赤ウニ」です。
ムラサキウニやバフンウニなど数種類あるウニの中でも、赤ウニは全国的にも生息数が少なく希少な上、最も美味しいと言われています。中でも「由良産」は格別として珍重され、市場に多く出回らないため「幻のウニ」と呼ばれるほどです。

由良の赤ウニ　白や紫のウニと色が違います

「鮮度に自信があるから腹側を見せる“逆さウニ”」

「由良の赤ウニ」は濃厚な旨みがあり、甘みも強いのが特長。日持ちを良くするためのミョウバンを使っていないので、雑味のない、ウニ本来の美味しさが堪能できます。腹側を見せて板に並べる、通称「逆さウニ」が由良の流儀。

腹側を見せて板に並べる「逆さウニ」

「水揚げしてすぐに港近くの加工場で板に並べます。新鮮な証として、逆さにバチッと並べるんです」

そう語るのは、素潜り漁の漁師、山林芳則さん。

見事な体格の素潜り漁師　山林芳則さん

「メジャーリーガーから素潜り漁師に」

立派な体格の山林さん。そのただものではないオーラに経歴を伺ったところ、実は、元野球選手でメジャーリーグにも所属していました。活躍するも肩を壊し、由良に帰って、父が営む素潜り漁を継ぎました。野球で鍛えた身体で子供の頃から海と親しみ、潜っていただけあり、漁師仲間から「潜水艦」と呼ばれるほどの息の長さで、赤ウニやアワビをとるそうです。今では由良町漁協青壮年部の会長も務めています。

素潜り中の山林さん

「ムラサキウニは広い地域でとれますが、赤ウニは全国的にも希少で、淡路島のなかでもとれる場所が限られています。しかも、赤ウニってめちゃくちゃ弱いんですよ。少しでも傷がついたり、水温が低いままだと死んでしまう。今年は水温に耐えきれんくて結構死んでいる赤ウニが多くて。ちょっと海の感じが異常なんですかね。数が少ないですね」

「光も届かない１４メートルの海底で漁をする」

訪れた７月末は、まさに赤ウニ漁の最盛期です。山林さんの船に乗るのは、山林さんと２人の従業員、そして８２歳の父親の４人。赤ウニがいるポイントで山林さんたちが海に潜っている間は、８２歳の父親が操船と見張りをします。

「赤ウニは、水深の深いところにいるんです。浅くて５ｍ。深くて１４ｍまで潜ります。１４ｍだと光も届かないから、懐中電灯を持っていきます。ムラサキウニは岩の横にポンポンいるけど、赤ウニは岩の下の砂に潜ってる。半分くらいしか見えないのを、カギツメで引きずり出すんです」

山林さんの商売道具　懐中電灯付きのカギツメ

古来から「御食国」の良港として栄えてきた由良には、素潜り漁の伝統と技術が受け継がれています。由良には現在、８０人以上の素潜り漁師がいて、最高齢は８０歳とのこと。

「海産資源保護のため、酸素ボンベをつけて漁をするのは禁止です。タンクを背負ったら今よりもっと潜れてしまうので、とりすぎて１、２年で根絶やしにしてしまうと思います。」
夏は赤ウニ、春はムラサキウニ。アワビにサザエ、ナマコなども漁の対象です。
海産資源を保つために、由良では稚ウニや稚貝の放流も積極的に行っています。

「由良では稚ウニを放流しているから毎年とれるんです。漁獲制限は無いけどカゴ一杯とったらやめるとか、漁師間での自主規制はありますね。あとは産卵期に入った赤ウニはとらない。しかも産卵期のウニってビックリするくらい、おいしくないんですよ。柿渋のようなエグ味が強くなるんです。

「磯焼けの原因はウニ！？」

山林さんはウニと磯焼けの関係にも注目しています。

「由良の磯は海藻がたくさん生えているんです。海藻は魚の隠れ家になるし大事なものですが、ウニは海藻をエサにしています。ウニをとらないと、海藻が食い尽くされて磯焼けしてしまうんです。今、全国で磯焼けしているところは、ウニをしっかりとれば、海藻が復活すると思います。僕達はウニをとることが本業なので、何か力になれないかと考えています」

豊かな海藻が美味しいウニを育て、漁師がウニをとるから海藻が育つ。
その結果、とれるウニは身がたっぷり詰まった、極上品！
「由良の赤ウニ」は、海と素潜り漁師が長い時間を掛けて作り上げた理想的な循環の産物でした。

贅沢な由良の赤ウニ丼