白鶴を超える白鶴をつくる 別鶴プロジェクト

日本酒の可能性を覗いてみたくて。

めざしたのは、若い世代にとどく日本酒づくり。

「若い世代に、もっと日本酒を楽しんでほしい」、
「若い力で、日本酒の世界を盛り上げていきたい」。
そんな若手社員たちの声からはじまった日本酒づくり。
白鶴とは異なるタイプの、別格のお酒をつくることを目指して
「別鶴」と名付けられたプロジェクトは、
すべてが順風満帆に進んだわけではありません。
熱い想いを上司にぶつけてから3年半、
開発に乗り出してから2年半。
これは、笑われても、失敗しても、
夢をあきらめなかった、
“私たち”のものがたり。

日本酒の未来を、自分たちでつくっていく。

日本酒、と聞いて思い浮かべるのはどんなシーンですか?
お父さんが晩酌に飲んでいるお酒?
それとも、ひとりの時間にゆっくりと嗜むお酒?

確かに、そんな楽しみ方ができるのも魅力のひとつかもしれません。しかし、日本酒はもっと自由になっていい。ホームパーティーやバーベキューの場面でも、気軽に持ち寄れる存在になってもいい、と私たちは思いました。日本酒の消費量は年々減少をつづけています。ようやくやってきた日本酒ブームの到来も、そうした傾向を大きく変えるには至っていません。だから今、若者たちがもっと飲みたくなる日本酒づくりを。そんな想いを上司にぶつけたのが3年半前のことでした。
しかし、日本酒業界を知り尽くしているからこそ「それは本当に白鶴が取り組むべきことなのか。今、必要なプロジェクトなのか」と厳しい反応。ときには意見がぶつかって、激しい言葉を交わしたこともありました。だけど、白鶴もかつては日本酒の可能性を切り拓いてきた存在。だからこそできることが、やるべきことがあるはず。そして、その真価をもう一度発揮したい。私たちのそんな声に頷き、開発の許可が出たのが2016年冬。日本酒に馴染みがない方も、日本酒が好きな方も、あっと驚くような日本酒をつくる。

私たちの2年半に渡る挑戦が、いよいよはじまりました。

ひとり、ふたり、仲間たちがふえていく。

若い世代にとどく日本酒をつくる。
そのプロジェクトに集まったのは所属は異なりながらも、同じ想いと情熱を持った若手社員たち。商品開発の経験がないメンバーも多く、すべてが手探りの状態で進められていきました。しかし商品開発の経験がないということは、これまでの「あたりまえ」を取り払った議論ができるということ。既存の日本酒のイメージにとらわれることなく、実際に身近にいる友人たちがさまざまなパーティーに連れていきたくなるように、どこまでも尖った日本酒をつくることを目指して議論を重ねました。

たとえば、日本酒の印象を大きく左右する「香り」。理想とする香りを実現するために、白鶴の中で長く使われずに眠っていた、お蔵入り酵母を使用することに決めました。また、原酒の一部を樽に入れ、香りをつけてから元に戻すという工程を加えていることも、理想に近づくためのひとつでした。さらに、味や香りと同じくらい大切にしたのが、広く手にとっていただくためのネーミングやラベルです。何度も話し合い、迷い、悩んだ末にたどり着いたのが「ムシメガネ」という言葉。日本酒の新しい可能性を覗いてほしい、そう思っていた私たちにとって、まさにぴったりのシンボルでした。

しかし、そんなふうにこだわりが随所に詰まった日本酒づくりは、当然ながら生産現場へ負担を強いることになります。
「これから商品としてどう育っていくのか、そもそも育つのかどうかさえもわからない」
試作をする段階では、プロジェクトに対する否定的な声も決して少なくありませんでした。

それでも。
それでも、私たちはやり遂げたい。日本酒の未来が見たい。

私たちはそれぞれ、自分たちが所属する部署で、自分の言葉で、熱い想いを伝えていきました。そして、共感し、協力してくれる仲間が、少しずつ少しずつ増えていく。当初、「若手プロジェクト」とだけ呼ばれていたこの取り組みも、次第に「別鶴」という名前で浸透するようになっていきました。

風が、変わった。

1年が過ぎ、理想の味が形になってきたころ、プロトタイプの試飲会が開かれました。集まったのは経営陣や生産現場の責任者、そしてこのプロジェクトに興味と関心を持ったさまざまな社員たち。私たちは一人ひとり、プロトタイプが注がれた猪口を鼻に近づけ、口に触れ、傾ける様子を固唾を呑んで見守っていました。元々が若い世代を強く意識してつくったもの。果たして年齢も立場も異なる人間が、どのような評価を下すのか。酷評されることも、覚悟していました。
しかし、若手社員はもちろん、何十年も日本酒づくりに携わる社員、杜氏の肩書きを持つベテラン、そんなひとたちの間にも「……、旨い」の声が広がります。そして、経営陣のひとりがある言葉を発しました。

「実際の現場でテストをしてみてもいいんじゃないか」

それは、これまでの小規模な試作から実生産のためのテストに移るということ。いよいよ失敗のできないステージに立つことを許されたということ。私たちが信じてきた味が、重い扉を開いた瞬間でした。

そして2018年冬、出来上がった3つのお酒を携え、白鶴初の試みとしてクラウドファンディングにチャレンジします。「若い世代に向けて、日本酒の可能性を広げる」という想いでつくった日本酒がどんなひとたちに、どれほど受け入れられるのかを知ることが目的でした。開発をはじめて2年、こだわりも、わがままも詰め込んできました。胸を張ってお届けできる、その言葉に嘘はありません。しかし、それが世の中に求められなければ、すべてが水の泡となり消えてしまう。緊張感が、私たちを包んでいました。

2018年12月5日17時、
クラウドファンディング開始。

Makuakeによるクラウドファンディング

ついに、審判の時はやってきました。予想をはるかに超えるスピードで切り替わっていく25%達成、50%達成、75%達成……の画面表示。見守っていたメンバーからは歓喜の声が湧きます。そして、なんとわずか7時間後には目標金額の100万円を達成。開始した日の日付が変わろうとする、その前の出来事でした。
最終的には目標の5倍を超える500万円以上の支援が集まり、数多くの方たちが「別鶴」というプロジェクトを応援してくださったこと。それは、何よりも大きな勇気になりました。そして、支援していただいた方の半数以上が、私たちが届けたいと思っていた20代、30代であったことも喜びでした。

挑戦しなければ、うまれないもの。

若手が中心となり、これまでは敬遠されていたような素材や手法を使い、クラウドファンディングでは力強く背中を押され、さまざまな 「初挑戦」を積み重ねたものが形になった今回のプロジェクト。
しかし、これでゴールではありません。白鶴にはチャレンジ精神を持ったひとが、まだまだいます。日本酒を愛し、もっともっと多くの場面で飲まれてほしいと願うひとがたくさんいます。そんなひとたちがいる限り、「別鶴」という場所で、きっとまた新しい日本酒が生まれていくはず。今、私たちは本当にそう信じています。

日本酒はこうあるべきだなんてルールは、どこにもありません。
味も、見た目も、楽しみ方も、もっと自由でいい。

そんな想いが、ひとりでも多くの方へ届きますように。そして、「別鶴」から生まれた3つのお酒をきっかけに、日本酒の世界を覗きみた方々が、もっと身近に、もっと気軽に日本酒を楽しむ時間が増えることを心から願っています。

「新しい日本酒の世界を覗こう」

クラウドファンディングで
ご支援いただいたお客様からの声

  • 正直に言うと白鶴さんのお酒は低価格で
    「質より量」というイメージがあり、
    そんな企業が、このような取組みを
    なさったのは非常に驚いた。
  • 日本酒離れが進むなか、
    若い人たちに飲んでもらえる
    日本酒になればいいですね。
  • 大手というだけで低く評価されがちな
    酒蔵として、
    偏見を覆すような、
    大手の底力がうかがえるような
    酒を期待します。
  • 日本酒の未来、ひいては
    日本の未来に向けた
    素晴らしい取組みであると思います。