ここが気になる!白鶴酒造のCSR 第三者意見白鶴酒造のCSR>第三者意見

第三者意見

兵庫県立大学
国際商経学部 教授
三崎 秀央
1999年福島大学経済学部助教授、2009年兵庫県立大学経営学部教授を経て、2020年より現職。
経営学者として組織の公平性、創造的組織を研究する傍ら、ベンチャー企業の取締役も務める。
兵庫県立大学 国際商経学部 教授 三崎 秀央

白鶴酒造株式会社のCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)に関する取り組みに対して、経営学者として第三者の立場から意見を申し上げます。

一般に、CSRとは「様々なステークホルダー(株主、従業員、顧客や取引先、地域社会など)を念頭に置きながら、企業が社会的な存在としての責任と経済活動を高いレベルで調和(あるいは相乗効果を発揮)させることとして捉えられています。白鶴酒造ではCSRについて、これまでは「環境保全活動」や「社会貢献活動」といった形でウェブサイトに掲載してきました。しかし、この度、ウェブサイトを一新しCSRに関する情報を一元的にまとめた「CSR SITE」を立ち上げ、「酒造りを通して豊かな食文化、生活文化の創造を応援することで企業の社会的責任を果たし、未来に向けて持続的な成長を実現していきます」と内外に向けて宣言したことは、白鶴酒造の強い意志を示すものとして高く評価したいと思います。

白鶴酒造は1999年に環境方針を制定し(2005年改訂)、2008年からは中期経営計画の目標にCSR経営を掲げるなど、時代の流れに合わせてその取り組みを発展させてきました。以下では、現在の取り組みについて、環境編と社会編に分けてコメントしたいと思います。

環境編について

環境対策については、2012年に冷温同時取出ヒートポンプを導入するなど業界をリードする取り組みがなされてきました。中でも私が注目したのは、3R(リデュース、リユース、リサイクル)への取り組みです。飲料業界では3Rは取り組まなくてはならない必須の活動だと言えますが、白鶴酒造では3Rに積極的に取り組むだけではなく、リサイクルの過程で酒パックの一部を地元の就労継続支援事業所「御影倶楽部(社会福祉法人 木の芽福祉会)」に提供し、それが手作業の紙すきなどを経て様々な再生品として製品化されるといった、社会貢献を意識した活動が組み込まれています。社会貢献活動が日常的なビジネスプロセスに組み込まれていることは、効率性や継続性という観点からも望ましい形であるといえるでしょう。

社会編について

2015年に国連サミットで採択された持続可能な開発目標(SDGs)は、2030年を年限とする17の目標からなり、政府・自治体だけではなく多くの企業が目標達成に向けて活動しています。白鶴酒造は、このうち10の目標にコミットしています。また、酒蔵の開放や資料館の無料展示、自社開発の酒米・白鶴錦の田植え・稲刈り体験など、社会的な活動にも積極的に取り組んでいます。とりわけ、私が注目したのはダイバーシティや働き方改革への取り組みです。障がい者雇用率が3%を超えていることや、女性活躍の前提となる各種制度を導入し、活用が進んでいることは、最も重要なステークホルダーの1つである従業員への高い関心を物語っています。特に、男性が1.5ヵ月の育児休暇を取得したことは、ご本人の価値観や考え方の多様性に繋がる重要な出来事になったのではないでしょうか。

今後の取り組みへの期待

白鶴酒造にとって、ダイバーシティに対する取り組みをさらに進めていくことがCSRの基礎になるのではないかと感じています。現在の経営学では、ダイバーシティ・マネジメントは、社会福祉的な意味だけではなく、組織の創造性を高めるために重要な取り組みとして認識されています。CSRの取り組みが、社会的責任と経済活動を高いレベルで調和させたもの、あるいは相乗効果を発揮させたものになるためにはイノベーションが必須となります。CSRの取り組みをこのように捉えることで、白鶴酒造が培ってきた伝統と革新する力をより強く発揮できる組織になるのではないでしょうか。

第三者意見をいただいて

白鶴酒造株式会社のCSRに関する取り組みに対し貴重なご意見をいただきありがとうございます。当社は日本一の酒どころ「灘五郷」の地で1743年に創業いたしました。以来、酒造りには欠かすことのできないこの地の豊かな環境や地域とのつながりを大切にしてきました。そして、現在、環境や人権などに関して企業の社会的責任が求められ、年々その重みも増しています。今回、そのCSRに対する取り組みをステ-クホルダ-の皆様により深く知って頂きたく情報を一新いたしました。掲載内容もQ&A形式で紹介するなど工夫いたしましたので、是非多くの方にご覧いただきたいと思います。

さて、この度いただいた第三者意見では、過分な評価をいただきありがとうございます。ご指摘頂いたダイバーシティに対する取り組みは、今後の組織の発展のために不可欠なものとして、さらに推し進めていきたいと思います。当社は、今後もステークホルダーの皆様の期待と信頼に応えてまいります。また、より一層企業価値の向上を図り、価値ある伝統を継続し、持続可能な社会の実現に貢献していきたいと思います。

上席執行役員 管理本部長 兼 総務人事部長 兼 CSR及びコンプライアンス推進担当
中西典哉