世界三大漁場の一つとして名高い「三陸・金華山沖」の恵みを受け、200種類以上の海の幸が水揚げされる宮城県石巻市。全国的に有名な「金華」ブランドをはじめ、牡蠣にホタテと、どの海産物も格別の美味しさですが、ぜひ知ってほしい海の宝のひとつに「ホヤ」があります。
5つの味覚が味わえる魔法の食材
石巻市はホヤの生産量日本一。ホヤは甘味、酸味、塩味、苦味、うま味という、5つの味が全て詰まっている食材です。その独特の臭みが苦手という方も、とれたての新鮮なホヤを、ぜひ一度、お試しください。これまでのホヤのイメージが変わるはずです。臭みがほとんどなく、様々な味を楽しむことができると思います。ホヤのイメージが変わってヤミツキになるはずです。
美味しいホヤが育つ条件が揃う鮫浦湾
ホヤは「三陸の珍味」と言われるように、国内産ホヤの約8割が宮城県で養殖されています。その中でもトップクラスの水揚げを誇る石巻市「鮫浦漁港」を訪れました。
宮城県石巻市にある石巻魚市場からは、車で45分。三陸特有のリアス海岸に沿うようにして、峠のカーブをいくつも越えた牡鹿半島の入り江に「鮫浦(さめのうら)漁港」はありました。
緑に囲まれる鮫浦漁港
鮫浦湾は、リアス海岸によって森のミネラルを含んだ水が直接海へ流れ込むため、魚たちのエサとなるプランクトンが豊富。ホヤの養殖に絶好の環境が整っています。
食べ方いろいろ。刺身だけではありません!
鮫浦漁港で祖父の代からホヤの養殖を営んでいる阿部誠二さんにお話を伺いました。小学6年生の頃から船に乗っているという阿部さん。高校時代は早朝にホヤの水揚げを手伝ってから学校へ行っていたそうです。現在はお父さんと一緒に漁業を営んでいます。
ご自身の船と阿部さん
ホヤといえば一般的にお刺身やホヤ酢と呼ばれる酢の物で食べられていますが、他に美味しい食べ方はあるのでしょうか。
「蒸しホヤ、焼きホヤも旨いですよ。ホヤの唐揚げ、天ぷらも絶品です」
生食されることの多いホヤですが、実は、蒸して良し、焼いて良し、揚げて良し!の万能食材なんです。
阿部さんに蒸しホヤ、焼きホヤの作り方を教わりました。
「蒸しホヤは、まずホヤを半分に割って、肝を出して、大きな鍋やアルミ缶にお酒入れて、15分ほど蒸すだけです。焼きホヤは、半分に割ったホヤを、殻が焦げるまで焼くんです。ちなみに、ホヤを割らずにそのまま焼くと爆発するので、どうかお控えください。」
笑いながら注意するべきことを阿部さんも教えてくれましたが、皆さん、ホヤの爆発には、くれぐれもご注意ください。
火を通したホヤは、甘みがさらに増して旨味が凝縮し、プリっとした食感も楽しめます。
焼きホヤ コンロで焼くと香ばしい匂いに
ホヤの調理はいたって簡単。基本的には、殻を割って肝を外し、黄色い身を取り出し、水で洗えば下ごしらえはOKです。丸ごとのホヤを見かけたら、ぜひ挑戦してみてください。そして、阿部さんの口から、驚愕のホヤメニューも飛び出します。
「ホヤヨーグルト。僕は大好きです!」
阿部さん特製のホヤヨーグルト
ホヤとヨーグルトの組み合わせ!斬新なそのメニュー、作り方は?
「水切りヨーグルトに、ホヤの刺身を盛って、オリーブオイルとハチミツをかけます。
塩を振り、最後にブラックペッパーを少しかけたら完成です。
これが、びっくりするくらい旨いんです!」
まるでフルーツ!?ホヤ×ヨーグルト
ホヤヨーグルト、半信半疑で食べてみました。これは、本当に絶品でした。
ヨーグルトの酸味とホヤの風味がよく合います。
つるんとした食感が新感覚のデザートのよう。
ハチミツの甘さとブラックペッパーのスパイスも絶妙にマッチします。
「東日本大震災で、多くの料理人さんもボランティアで来てくれました。その時に知り合ったある料理人さんが、フレッシュなホヤはフルーツみたいだね、と言ってホヤヨーグルトを作ってくれたんです」
そのオレンジ色の見た目から「海のパイナップル」と呼ばれるホヤですが、新鮮なホヤは中の身もフルーティな味わいです。様々な料理に使える食材として、無限の可能性を感じます。
ホヤで日本酒が甘くなる!
もちろんお酒のお供としても相性抜群です。
「ホヤを食べた後に日本酒を飲むと、甘く感じるんですよ」
ホヤの成分がお酒を甘く感じさせるそうで、ホヤはお酒がすすむ「最強のつまみ」と言われています。
さらに、ホヤは栄養豊富。亜鉛などミネラル成分や疲労回復にも効果があると言われるタウリンも多く含まれています。
ホヤを食べながら飲む日本酒は甘さが引き立つ
船上で味わうホヤよりもおいしい!?
ただひとつ難点をあげるとすれば、ホヤは新鮮さが命。水揚げから時間が経つと、独特の臭みが強くなってしまうそうです。やはりホヤはとれたてを船の上で食べるのが、最も美味しいのでしょうか?
「獲れたてはもちろん美味しいです。ただ、実は一晩、生け簀に入れたホヤが一番美味しいと思うんです。生け簀でホヤがリラックスするとフンをしてくれることで磯臭さがかなり抜けて風味がよくなるんです。」
状態の良いホヤしか好んで食べないという阿部さんの奥様も、一晩おいたホヤがお好みだそうです。そして阿部さんは、冷凍のホヤの美味しさもお勧めしたいと話します。
「ホヤは新鮮さを保つのが難しいので、なかなか全国に広まリませんでした。ですが、今は冷凍技術が発達し、浜で水揚げした後、すぐに加工してホヤを冷凍します。その味は間違いなく美味しいです。しかも、ホヤは冷凍すると、さらに甘みが増して旨くなるんです」
冷凍技術によって全国で美味しいホヤが食べられるようになり、ホヤの国内消費量も右肩上がりで増加しています。しかし、阿部さんは、もっと国内で食べてもらいたいと考えています。
韓国の輸入規制 国内消費を増やすことが課題
「東日本大震災前は、全体の8割近くは韓国に輸出していました。韓国はキムチやビビンバでホヤを食べる文化がある。でも、震災後は韓国の輸入規制で販路を失いました。ホヤは出荷に3年から4年かかるので、生産調整も難しいんです。食べごろのホヤがいつでも出荷できる状態にあるので、もっと国内の需要を増やしたいですね」
ホヤの魅力を笑顔で語る阿部さん
東日本大震災で鮫浦漁港は、ほぼ全ての施設が流出。阿部さんの養殖設備も流されました。10年以上が過ぎた現在も、近隣エリアでは工事車両が頻繁に働いています。
ホヤの美味しさは、とれたてを食べるに限ります。ぜひ、おいしくて栄養豊富なホヤを石巻で味わってみてください。
この先、ホヤの魅力が全国に広まりますように・・・
阿部さんと一緒にまるポーズ!
公式YouTubeでも宮城の魅力を配信中
-
漁港巡り 宮城県尾浦漁港「極上の銀鮭」篇
-
漁港巡り 宮城県尾浦漁港「極上ホタテ」篇
-
漁港巡り 宮城県鮫浦漁港「至高のホヤ」篇