踏桶に入れた精米した米を洗うのが洗米です。半袖シャツにサルマタ、鉢巻姿の二人の若者が素足で踏桶に入り、勇ましい掛け声に合わせ、踏んでは水を流す作業を続けます。
大釜の上に甑を乗せ、これで米を蒸します。甑の底には小さな穴があり、沸騰した釜の蒸気が昇るようになっています。蒸気が勢いを持って昇るまで釜屋は気を許せません。
蒸米は添、仲、留、酛・麹用に区分し、それぞれ放冷場で冷やします。飯冷やしにもルールがあって、筵に移した蒸米をまず釜屋が、両端から一本筋を描きます。そして二回目に二本、三回目に三本と冷却を均等に行うため、繰り返して行います。
麹は室という高温・多湿の特別な部屋でつくられます。品質の良い麹菌を均等に繁殖させるために二~三時間おきに蓋打ち、仲仕事、仕舞仕事と続け、麹の積み替えを二回行います。
麹と蒸米を半切に計り分けます。水は龍の口で調整しながら大半切りに入れ、「山起こし」といって、棒櫂でよくかきまぜます。
醪の仕込みは、原則として添・仲・留の三段仕込。予定の発酵を終えた醪は、仕込桶に汲み出し、担桶で小出桶へ移します。
醪を酒袋に入れ、酒槽でしぼって酒と粕とに分離。最初は、約千枚の酒袋を荒しぼり。翌日、責槽に集めてしぼり直します。さらに、一日圧搾して粕を抜きとり清酒が生まれます。
しぼりたての酒は、白く濁っています。これを、約一週間おいて沈殿させ、上澄みを他の桶へ移す作業が滓引きです。そして、殺菌や熟度香味などの調節のために、酒を釜に入れて約六十度に加熱します。これを火入れ(煮込み)といいます。
火入れの終わった酒は囲い桶(貯蔵桶)に入れ、酒の上に浮いている泡をすくい取り、フタをします。この時、フタの上に、重石を十個並べ、桶とフタを密着させ、秋まで貯蔵するのです。
清酒は、厳選された吉野杉の四斗樽に詰め、出荷します。銘柄商標などをいれた藁菰を樽に巻き、とじ縄をかけると菰冠樽のでき上がりです。