日本海でも有数の漁船数を誇る輪島港その海を支えるのは、元気な女性たち。朝市、海女、夫婦船輪島を支えるウーマンパワー 日本海でも有数の漁船数を誇る輪島港その海を支えるのは、元気な女性たち。朝市、海女、夫婦船輪島を支えるウーマンパワー

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石川県輪島市 輪島漁港

更新日:2022/11/15

日本海の水産業を支える輪島港

能登半島の北部に位置し、周辺に好漁場を有していることから、沿岸漁業拠点港として、水産業を支える輪島港。
大きな港には所狭しと大小様々な漁船が並んでいます。
海に出る漁師の数が多ければ、それを捌く人、魚を加工する人、
そして売る人も輪島には多く、街に漁業関係者がたくさんいます。
中でも、輪島漁港から歩いて数分、奥能登名物、輪島の朝市から、毎朝元気な女性の声が聞こえてきます。

輪島の船

日本海の厳しさを吹き飛ばす、活気あふれる輪島名物の朝市

輪島朝市は1000年の歴史があるといい、日本3大朝市のひとつに数えられています。
360メートルの朝市通りには、多い時で200を超える露店が軒を連ね、ほとんどの店の主は女性です。
そぞろ歩くとあちこちから「こうてくだぁ!」と、元気な声が掛かります。朝市の露店は、祖母から母、そして娘へと代々受け継がれているといいます。
女性の活躍は輪島の伝統。今回は現在の輪島を支える3人の女性にお話を伺いました。

干物販売 南谷良枝商店 南谷良枝さん

能登産にとことんこだわった干物を製造・販売する南谷良枝さん。
行商、朝市、インターネット販売と大活躍で、地元では、“やり手の女社長”と評判です。

干物販売 南谷良枝商店 南谷良枝さん

輪島港のセリが特徴的なのは、海の男たちと一緒に女性が参加していること。
南谷さんをはじめ女性たちがセリ落とした魚は、朝市や干物などの加工場へと運ばれていきます。
とれたての新鮮な魚はすぐに捌かれ、冬は輪島の冷たい風で一夜干しにされます。
南谷良枝商店の看板商品「天然輪島ふぐ5年熟成いしる干し」は、天然の真ふぐを、自家製のいしる(魚醤)と輪島の地酒で味付けし、一夜干しにしたもの。ふわっと口の中に広がるいしるのコクとふぐの旨味がたまらない逸品です。

天然輪島ふぐ5年熟成いしる干し

かごを担いで行商する祖母の姿が原点

輪島には「振り売り」といわれる江戸時代から続く行商文化があります。
南谷さんは魚の行商をする祖母の姿を見て育ちました。

「ばあちゃんが干物を入れた大きな竹かごを重そうに担いでいる姿を今でも思い出します。
ばあちゃんは1年に1度の祭りの時にだけ、地元の夕市で魚を売っていました。ばあちゃんは忙しいので、小学生だった私に店番を任すんです。すると、ばあちゃんの魚を毎年楽しみにしてくれているお客さんがたくさん来るんですよ。とても慕われているんです。ものを売るって楽しいと思いました」

魚以外のものを届ける 見守り行商

祖母の背中を見て「いつか自分の店を持ちたい」と思い続けてきたという南谷さん。
18歳で朝市に念願の店を構えました。仕入れから加工、販売まで、自らの手で行います。
朝市、インターネット販売と並行して、祖母の行商も受け継ぎました。
小型のバンに商品を積んだ南谷さんは、近くにスーパーがなく、買い物が出来ないお年寄りのため、週2回、行商に出かけます。

「心掛けているのは休まないこと。雨がふっても、雪がふってもなるべく休まない。みんな、待っとるから」

行商の車前で、お年寄りと交流する南谷さん

それぞれの家庭の好みを熟知している南谷さん。届けるのは、旬の美味しい魚だけではありません。

「コロナ禍で買い物に出られないという方も多いので、魚や干物だけでなく、日用品の買い物代行も受けています。お得意様は親戚のようなものだから、力になりたい。商いは人と人。祖母から学んだことです」

集落の高齢化がすすむ中、見守りの役割も果たす「見守り行商」。江戸時代から続く輪島の行商文化は、少しずつ形を変えて、これからも受け継がれていくことでしょう。

舳倉島(へぐらじま)の海女 早瀬千春さん

輪島市の沖合、48キロに位置する「舳倉島」。
のんびり歩いても1時間でひとめぐりできるほどの小さな島です。

舳倉島

舳倉島の周囲は、海産物の宝庫です。現在160人の海女が活躍しています。
一つの集落にこれだけの海女がいるのは日本一。
輪島の海女による伝統的素潜り漁技術は「重要無形民俗文化財」、そして「世界農業遺産」にも
指定されています。早瀬千春さんは、舳倉島の海女の中でもトップクラスの潜水技術を誇る名人です。

舳倉島(へぐらじま)の海女 早瀬千春さん

受け継がれる舳倉島の海女文化

舳倉島では親子代々海女という家も少なくありません。千春さんも海女の家に生まれました。
その家系図には、競泳のレジェンド山中毅氏の名前も。メルボルン、ローマ、東京と3つのオリンピックに出場し、4つの銀メダルを獲得した山中氏。母親が海女だったそうです。

「心臓が強い、息が長い、視力が良い、のは海女の必須条件。心臓が強いのは、血筋でしょうね」

© Kate Thompson-Gorry

撮影 海人写真家 古谷千佳子

© Go Tabinuki

ウエットスーツに水中眼鏡という軽装備で、どこまでも透明な海に潜っていきます。
千春さんは最大25メートルまで潜ります。海の中はどんな世界が広がっているのでしょうか。

「メガイアワビは浅瀬にいますが、幻のアワビといわれる大きなマダカアワビは10メートル以上潜ります。海に潜っていると100キロ級のマグロやバラクーダ、サメに囲まれることもありますよ。サメは怖いイメージですが、舳倉島の海女400年の歴史上サメに襲われたという事故は一回もないんです。サメは食べ慣れている魚を食べるだけ。襲ってきませんよ。海女は海の神に守られているとも言われていますが(笑)」

海女採りアワビ

栄養豊富な海の海藻類を食べて育った、舳倉島産のサザエやアワビ。
海女が採ったものは「海女採りさざえ・あわび」としてブランド化されています。
素潜り漁といえば夏のイメージですが、なんと極寒の冬も海に入るそうです。

「冬はナマコやギバサ(神馬草・じんばそう)を採ります。でも、海が時化ると漁が出来ないので。輪島の海女は2つ職業を持つのが普通です」

千春さんのもうひとつの肩書は、ウエットスーツの製造、販売。主に海女が使用するウエットスーツで、全てオーダーメイドです。一般的なウエットスーツは厚みが均一ですが、早瀬さんのウエットスーツは海女が動きやすいように、腕周りなどの厚みを変えて作っているそうです。

千春さんウエットスーツ

いずれ採れなくなる、その前に

各地で海洋資源の減少が問題化していますが、舳倉島周辺も例外ではありません。

「ここ2,3年でサザエもアワビも減っています。まだ潤っているうちに、手を打たないといけない。
例えば、ナマコは産卵するときに岩の上に立つんです。立ってるナマコは採らないなど自主規制していますが、もっと禁漁区域を確保するなど大きな改革が必要だと感じています」

千春さんの娘は海女の道を選びましたが、貝類が減る中、海女志望の若い人も減っているとか。海を豊かに保つことは、海女文化を守ることにもつながります。

漁師 東野亜希さん

輪島港で操業する漁船の多くは、2人から3人で漁を行っています。
たいていが親子や夫婦です。

東野さん夫婦

魚の価値は獲った直後の扱いで変わる

水揚げされた魚を、港で待つ漁師の妻が荷捌きする様子は各地の漁港で見られますが、
船に乗って漁を行う女性は、そこまで多くありません。
東野さん夫婦は輪島でも、「夫婦漁師」として最初に名前が上がるほど。
お二人が獲る魚は、「東野さんが獲った魚」として価値が上がります。

もちろん、ご主人の竹夫さんの腕前あってこそですが、その価値を支えているのは魚の扱いを熟知している奥様の亜希さんです。

二人が行うのは、長さ1.8キロメートルもある網をしかけて引きあげる“刺し網漁”。
船を走らせ、沖に2時間。ノドグロを始め、タラ、めばる、ワラサなど、旬の魚を捕えます。
「例えば、タラは水揚げしたらすぐに氷を入れて箱詰めして、とにかく動かさないこと。動かすと変色したり、白子が溶けます。それこそ赤ちゃんをだっこするように、そーっと扱っています」
魚を丁寧に扱うこと。これがなかなか出来ないといいます。

飲食店などにとれたての魚を直送する「鮮魚ボックス」という取り組みは、限りある海の資源を持続可能にするため「量をとるよりも輪島の魚のブランド価値を高めたい」という思いから7年前に始めました。当初は「何をやってるんだろう?」と訝しがられることもあったそうですが、いまや若い漁師の中にも、始める人が出ているそうです。
亜希さんも、魚の価値をあげるため船ですべきことを若い漁師の皆さんにも積極的に伝えています。
東野さん夫婦は輪島の海を大切に守りながら、発信していくことに努めています。

東野さんのとった魚

漁業はまだまだ男性が中心。女性の参加が期待される中で、輪島港には女性が活躍する伝統がありました。お話を伺った3人は、とにかく明るくてパワフル!笑顔あふれる取材となりました。ご協力ありがとうございました。

公式YouTubeでも輪島の魅力を配信中

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今回訪れた漁港へのアクセス

石川県輪島市・輪島漁港
住所
〒928-0075 石川県輪島市鳳至町下町166
URL
https://www.ikwajimagyokyo.jp/info/index.html
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