天然ものを超える旨さ!次世代漁師が育むブランド魚「いぶすき菜の花カンパチ」 天然ものを超える旨さ!次世代漁師が育むブランド魚「いぶすき菜の花カンパチ」

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鹿児島県 指宿

更新日:2024/3/07

鹿児島県指宿市に位置する山川漁港

いぶすき菜の花カンパチ

鹿児島県薩摩半島南部の指宿市に山川漁港があります。平均気温19度と温暖なその地では、12月下旬に菜の花が咲き始めます。ひと足早い春とともに、ぜひ味わっていただきたいお魚があります。
その名も「いぶすき菜の花カンパチ」。「かごしまのさかなブランド」に認定された、ブランド魚です。

つやつやに輝く「いぶすき菜の花カンパチ」

養殖カンパチの生産量日本一の鹿児島県で、ブランド認定されている養殖カンパチは、わずか5件。その中のひとつが「いぶすき菜の花カンパチ」です。
その品質の良さは、目利きが集まる市場でも評価が高く、地元の漁師さんに「天然カンパチよりうまい」と言わしめるほど!

「いぶすき菜の花カンパチ」の刺身盛り

養殖に向かない環境だからこそ

おいしさの秘密を探ろうと、「いぶすき菜の花カンパチ」の生産者、山川漁港で養殖を営む山野秀人さんにお話を伺いました。
すると、山野さんから意外なお話が……

「鹿児島大学の教授がここに来て、養殖には世界一向いていない環境だよね、と言われたことがありました。山川湾は海底の地底がすり鉢状になっていて、潮の通りが悪いんです。潮の入れ替わりがあっても表層だけで、深いエリアは潮の入れ替わりがほぼないんです」

山野秀人さん

それでも、山野さんが悲観的になることはありませんでした。
「潮の通りが悪い環境だからこそ、水を汚さないようにする」
山野さんは、これまでの餌のやり方を改革しました。

「父親が現役だった17,8年前は、毎日のように餌をやっていましたが、今は、夏場は週に3回、冬は週に2回が基本です。それも、魚がお腹いっぱいになるまでやらずに、8割で止めるんです。餌の食べ残しがないようにするので、水を汚しません」

餌を減らしても、魚の生育に影響はないのですか?

「過去と変わらないような生育の仕方をしています。それまでの餌やりがどれだけ無駄だったのか、という事なんです。しかも、魚が病気になりにくくなりました。内臓に掛かる負担が減ったんでしょうね。魚も人間と同じ、食べすぎはよくないんです」

腹八分目で健康に成長した山野さんのカンパチは、養殖魚特有の脂臭さがなく、美味しいと評判に。2007年には「かごしまのさかなブランド」に認定されました。極上のカンパチは、養殖に向かないと言われた山川湾ですくすく育っているのです。

養殖場で餌やりの作業をする山野さん

山野さんの生け簀は、10メートル四方のサイズが27つ。その1つ1つに、4,500尾ほどの魚を入れて育てています。5月に稚魚を入れて、出荷できるサイズに成長するのは2年後。半年程度で出荷できる魚種もある中で、出荷までの2年は長く、その分リスクも大きくなると言います。

赤潮で全滅 苦い後悔

実際に大きな被害を経験したこともありました。
山野さんは過去に、赤潮被害で多くの魚を失っています。その赤潮は2年続けて発生。1年目は赤潮が拡大する直前に多くの魚を急いで出荷することで、最悪の被害からは逃れることができましたが、2年目はブリが全滅、翌年出荷予定のカンパチにまで被害が及び、大赤字になってしまいました。

「1年目に赤潮の勉強をして、海水の中のプランクトンを調べるとか、人とつながって情報収集していれば、2年目は回避できたかもしれないのに、それを徹底的にしなかったんです。」と後悔をにじませます。
「今では赤潮が発生しやすい水温になったら、県の水産技術センターと連携して、海水のプランクトンを調べています。また、潮の流れをみて、生け簀を避難させるなど、対策もできるようになりました」

操船する山野さん

品質が問われる時代の変化

水産高校を卒業後、静岡県御殿場市の会社に就職。

「物心ついた時から漁業を継ぐことが当たり前と考えていました。でも、1度は知らない土地にいって、知らない世界を見てみたかったんです」

20代前半で故郷へ戻り、家業の「山栄水産」に入りました。初めは社長である父親と言い争いになることも多かったそうです。

「父親は漁師を何十年やってきて、今までのやり方を大事にしていました。もちろん、それも重要ですが自然環境も、人の生活スタイルも変化していますよね。そうであれば、僕たちもその変化に対応していかないといけないと思うんです。例えば、餌やりや経営の仕方も変えていかないと人や結果はついてこないよ、と。僕のこの考えを父に理解してもらいたく、よく衝突していました」

山野さんのように父親から家業を引き継いで、2代目、3代目の社長が増えたことで、父親世代がやらなかったことをやるように変わってきているといいます。

「父親世代はそれぞれが大将であり、自分のやり方を大事にしています。また、同じエリアの漁師同士でも、ライバルという意識で競い合って成長してきたところもあったと思います。その考えや関係性も全て否定するわけではないですが、今はスマホがこれだけ発展して人との繋がり方も変化しています。情報はみんなで共有して、いいところは取り入れて、若い漁師同士はどんどんオープンになっています。僕はこの変化は、いい方向に進んでいると思います。今は品質が問われる時代です。以前は、獲った魚を乱暴に投げたり木箱を蹴ったりすることもよく見かけましたが、僕らの世代、特に僕は周りにもそういうことはしないように教育しています。だって、この魚をみんなが口に入れるんですから。魚も道具も丁寧に扱うようにしています」

山野さんは働き方も改革しました。朝は6時に起床。夕方の3時、4時には帰宅。休みもしっかり取るそうです。小学生の息子さんは漁師を継ぐ気でいるのだとか。

「息子が漁師になったら、衝突してケンカしたりするのかな。その時、今の親父の気持ちが分かってしょぼんとするのかな、って(笑)」

いつの時代も、「俺の頃は・・」「今は昔と違って・・」という切り出し方があるはず。この先、漁師を継いだ息子さんとも、そんなやりとりがあるかもしれません。
ただ、そんな時も山野さんであれば「大事なことは何か」「環境は変わるもの」という柔軟な気持ちで息子さんと一緒に漁を続け、日本の漁業を支えてくれるのではないでしょうか。

公式YouTubeでも鹿児島の魅力を配信中

  • 【極上ブランド】いぶすき菜の花カンパチを豪快に捌く!ピチピチ&プリプリ超絶品!【漁港巡り 鹿児島県山川港編】

今回訪れた漁港へのアクセス

山川漁港
住所
〒891-0516 鹿児島県指宿市山川成川7409
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