佐賀県唐津市、玄界灘に面した串浦湾。
ここに食通たちが憧れる「うに」があります。
その名も「唐津の赤うに」。
希少!最高品質『唐津の赤うに』
PRIDE FISHに認定されている「唐津の赤うに」
うにの中でも希少性や美味しさから「幻のうに」と珍重されている赤うに。
数ある産地の中でも「唐津の赤うに」は最高級品質と称賛されています。
唐津の赤うに名人 袈裟丸彰蔵さん
自身が復活させた海と袈裟丸さん
「唐津の赤うに」で一番に名前が上がるのが、この方。袈裟丸水産の代表、袈裟丸彰蔵さん(46歳)です。祖父の代から続く海士の家系。高校卒業後、すぐに海士になりました。
獲るものは、アワビ、サザエ、ムラサキウニ、アカウニ、なまこ。アワビ、サザエ、なまこ漁が解禁となるのは12月!極寒の海に潜り、漁は3月まで続きます。続いての4月、5月は、ムラサキウニ。そして、いよいよ6月に旬を迎えるのが「唐津の赤うに」です。
価格を上げたい。ブランド化への挑戦
とれたての赤うに
実は袈裟丸さん、「唐津の赤うに」のブランド化にも関わっています。
「唐津の赤うにがブランドとして珍重されているのは、ここ5~6年なんです」
ブランド化されるまでは知名度も低く、価格も安かったとか。
「うに類の中でも赤うには特別に美味しい。どうしてこの美味しさが知られていないんだろう。どうしてこんなに安い値段なんだろう、と疑問でした。赤うには減少傾向で、価値をつけていかないと生活が成り立たなくなる……と、危機感を感じていました」
もっと価値を上げるにはどうしたらいいのか。袈裟丸さんの挑戦が始まりました。
最初は試行錯誤の連続だったと語る袈裟丸さん
「うにを獲って市場に出して終わり、では、何も分からない。そこで、赤うにを使ってくれる料理人を自分の足で探しました。料理人は食材のプロ。口に入れた時の反応を見ながら、どんな赤うにに“感動してもらえるのか”を研究しました」
感動するほど美味しいと評価された赤うにが獲れた場所や、食べている海藻の種類を調べ、データを集めました。
「うには育った場所によって味が違うんです。いろんな種類の海藻をバランス良く食べているうには美味しいんですよ」
さらに、うにの処理にもこだわったといいます。
「魚も活き締めすると美味しいじゃないですか?うにもパカッと開けて、身を剥くだけじゃない。技があるんですが、それは企業秘密です!」
料理人とのつながりから評判へ
袈裟丸さんは蓄積したデータを元に“これぞ!”という高品質な赤うにを、地元唐津の料理店に直接、卸すことを始めました。すると、たちまち料理人の間で評判に!
入手困難な袈裟丸さんの獲った赤うに
評判の「唐津の赤うに」に予約が殺到するようになりました。
袈裟丸さんが1日で獲る赤うには平均100個。良型のうにならおよそ5個程度使って、1枚の「板うに」になります。袈裟丸さんは週に50枚ほどの「板うに」を出荷しますが、予約に追いつきません。
「入荷待ちになることで価格競争を起こしたというか、入札みたいな形になって、どんどん価格が上がってきたように思います」
この数年のブランド化によって、知名度も価格も上がったという「唐津の赤うに」。ただし、良い事ばかりではないと言います。
「赤うにが高く売れるので、乱獲が目立ってきています。赤うにの数が激減していて、価格が上がっても収入は増えていないんです」
激減する赤うにを増やすために
袈裟丸さん自前の赤うにプール
プールの中で育つ小さなうに
袈裟丸さんは、放流事業にも力を入れています。うにの多くは卵や幼生の時期に、他の魚に食べられてしまいます。そこで、袈裟丸さんは自前のプールで、うにをどのくらいの大きさまで育てて海に戻せば、効率が良いのかを研究しています。
たった1人で藻場造成に挑戦
再生させた藻場で赤うにを探す袈裟丸さん
「海の中の環境を整える“海づくり”が“食づくり”につながっていくと思っています。海の中の環境を良くしないと、いい食材は育っていかないんです」
23歳で結婚。これからバリバリ稼ぐぞという矢先に、海の異変に気付いたという袈裟丸さん。
「海藻が少なくなってきて、磯焼けしているところがどんどん増えていったんです。磯焼けという言葉も一般的ではなかったこの時、海士の誰もが気にしていなかった。当時現役だった親父も気にかけていませんでした」
磯焼けによって真っ白になった海底
海の異変は、漁にも影響を及ぼしました。
「昔は、市場へ出せば収入になるアワビ、サザエを獲っていましたが、ここ10年は獲れなくなってうにを獲るようになったんです。でも、海藻がない所のうには、実入りも少ないし、味もいまひとつ。海の違和感は、危機感に代わっていきました。この先も持続的に漁をするには、どうしたらいいのかなと考えるようになったんです」
子供の頃から海を遊び場にしていた袈裟丸さん。かつては目にすることがなかった南方系の魚が増えて、長い棘に毒を持つ「ガンガゼ」が出現しました。ガンガゼは繁殖力が強く、あっという間に海藻を食べ尽くします。袈裟丸さんは、ガンガゼを駆除することを決めました。
鍵爪でガンガゼを駆除する様子
海藻を食べるガンガゼをつぶし、海藻から種を採集して磯焼けしている場所に植樹。袈裟丸さんは藻場造成に1日に2~3時間を費やしています。
「これで結果が出るのかという迷いや葛藤は常にあります。でも、自分ができることを、まずやってみるしかないんです」
藻場造成をはじめて5年くらいで、少し成果が見えてきました。
「回復の兆し、可能性を感じた瞬間に、更にどうにかしたいという気持ちが出てきました」
藻がまだ根付いていない場所は白く海の底が見えている 以前は画面に見える海の底が全てが真っ白だったそう
袈裟丸さんが復活させたエリアは突き出した半島の周囲100〜200m前後 長さ1キロ以上
藻場造成を続けて20年。袈裟丸さんはたった一人で、距離にして2キロ、なんと11ヘクタールという、広大な藻場を回復させました。
「1人でもこれくらいできるんだって、知って欲しいんです。まだまだ可能性がありますよと分かってもらいたくYouTubeも始めました」
袈裟丸さんのYouTube「袈裟丸チャンネル」
たった1人で始めた藻場造成は、広がりをみせています。
これまでの取り組みを伝えるために「串浦の藻場を未来へ繋げる会」を発足。会員は10人を数えます。さらに、同じように磯焼けで悩む他地区の漁港からも視察や「藻場造成を頑張りたい」という声も寄せられるようになりました。
全国漁青連の理事を務めている袈裟丸さん。情報は広く共有すべきと考えています。
「磯焼けなどの九州で起こっている出来事は、どんどん北上していきます。だから、今の現象を伝えていくことが大事だと思います」
皆さんでまるポーズ!
公式YouTubeでも佐賀県の魅力を配信中
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