日本酒の商品開発 技術でお客様のニーズにアプローチ
白鶴酒造では、「つねに一歩先を見つめる。」というポリシーのもと、日本酒の味わい、香り、飲用シーンを科学的にとらえた商品開発に取り組んでいます。酒米、酵母、麹、醸造技術といった基盤研究の成果を活かし、時代とともに多様化するお客様のニーズに応える日本酒を生み出してきました。
1.生貯蔵酒
「生貯蔵酒」は、加熱処理を行わずに低温で貯蔵することで、フレッシュな風味とまろやかな旨みを楽しめるお酒です。一方で、生の状態では「ムレ香」と呼ばれる不快な香りが生じやすいという課題がありました。
白鶴酒造では、「ムレ香」の原因がイソバレルアルデヒドなどの成分であり、麹菌由来の酵素反応によって生成されることを明らかにしました。さらに、この酵素を酒中から除去する方法として、限外ろ過(UF)技術に着目し、業界に先駆けて導入しました。
これにより、「ムレ香」の発生を抑えた生貯蔵酒の製品化を実現し、生貯蔵酒ならではの美味しさを安定して提供することが可能となりました。
2.「Hakutsuru Blanc」と「白鶴 まる」
「Hakutsuru Blanc」は、日本酒に馴染みのない層にも楽しんでいただくことを目的に開発された、アルコール分8%の純米酒です。独自に開発した酵母による爽やかな香りと、白麹由来のすっきりとした酸味を特長としています。
この白麹は、もともと焼酎造りで用いられてきた原料ですが、日本酒への本格的な活用は、当社の主力商品である「白鶴 まる」が先駆けとなりました。
目指したのはライフスタイルや嗜好の変化に対応した日常の食卓に寄り添う日本酒でした。当時一般的だったアルコール分15%よりも低い13%のマイルドタイプとしながら、「水っぽさ」を感じさせない酒質、洋食化してきた家庭料理に合う酒質を目指しました。試行錯誤を重ね、アルコール分13%の「白鶴 まる」の美味しさの軸として、白麹を用いた日本酒の技術開発に成功しました。
白麹を用いた日本酒は、単独では非常に酸味が強い特性を持ちますが、甘みのある酒やコクのある酒などとのブレンドにより、バランスの取れた、飲み飽きしない酒質に仕上げています。このようなブレンド技術も、白鶴酒造の強みの一つです。
技術が広げる、日本酒の可能性
定番酒の進化と、新しい価値の創出。白鶴酒造の商品開発は、研究に裏打ちされた技術によって、お客様の嗜好やライフスタイルの変化に応え続けています。
受賞
- 清酒のムレ香に関する研究、生物工学奨励賞(江田賞) (1994)
- 清酒麹菌の分子育種に関する研究、生物工学奨励賞(江田賞) (2005)
論文
- 清酒のムレ香成分の同定とその定量方法、醗酵工学会誌、67、237-244 (1989)
- 生酒のムレ香と限外ろ過処理、日本醸造協会誌、84(9), 583-587 (1989)
- 清酒ムレ香の官能評価、日本醸造協会誌、85(8), 576-579 (1990)
- ムレ香物質とその生成機構、日本醸造協会誌、88(11), 852-858 (1993)
- 清酒のムレ香に関する研究、日本生物工学会誌、73 (5), 213-223 (1995)
- 生酒の品質の安定性について、日本醸造協会誌、90(2), 87-92 (1998)
- 発色法によるムレ香生成酵素の活性測定法、日本醸造協会誌、90(2), 151-153 (1998)
- ムレ香生成酵素の性質と生成条件、日本生物工学会誌、74 (2), 91-96 (1996)
- イソバレルアルデヒド生成能の低い麹菌変異株の造成、日本生物工学会誌、74 (5), 375-379(1996)
- Purification and Characterization of Isoamyl Alcohol Oxidase("Mureka"-Forming Enzyme), Biosci. Biotechnol. Biochem., 63(7), 1216-22(1999)
- 麹菌によるイソアミルアルコールオキシターゼの生産と製麹における発現、日本生物工学会誌、78 (8),311-315(2000)
- 清酒のムレ香生成に関与する麹菌の新規遺伝子、日本生物工学会誌、78 (11), 455-457 (2000)
- Molecular cloning of the isoamyl alcohol oxidase-encoding gene (mreA) from Aspergillus oryzae, J. Biosci. Bioeng., 89(6), 522-527(2000)
- Molecular breeding of the Mureka-non-forming sake koji mold from Aspergillus oryzae by the disruption of the mreA gene, J. Biosci. Bioeng., 95(1), 40-44
- 清酒麹菌の分子育種に関する研究、日本生物工学会誌、84 (3), 89-95 (2006)
- The promoter activity of isovaleryl-CoA dehydrogenase-encoding gene(ivdA) from Aspergillus oryzae is strictly repressed by glutamic acid, Biosci. Biotechnol. Biochem., 71(6), 1561-1563 (2007)
学会発表
- 生酒の「ムレ香」成分の検索と同定、日本醸造学会(1988)
- 清酒のムレ香に関する研究(第2報)、日本農芸化学会(1989)
- 清酒のムレ香に関する研究(第3報)、日本醗酵工学会(1989)
- 清酒のムレ香に関する研究(第4報)、日本醗酵工学会(1990)
- 清酒のムレ香に関する研究(第5報)、日本生物工学会(1993)
- 清酒のムレ香に関する研究(第6報)、日本生物工学会(1994)
- ムレ香低生産性麹菌の育種とその醸造特性、日本生物工学会(1995)
- 発色法によるムレ香生成酵素の活性測定法、日本醸造学会(1995)
- ムレ香生成酵素の精製と諸性質の検討、日本生物工学会(1998)
- 麹菌 A. oryzae のムレ香生成酵素(IAAOD)遺伝子のクローニング、日本農芸化学会(2000)
- イソアミルアルコールオキシダーゼ低活性麹菌の特性、日本醸造学会(2001)
- 野生型実用株を宿主としたムレ香非生成麹菌の分子育種、日本農芸化学会(2002)
- ムレ香生成酵素遺伝子mreAに相同な麹菌の新規遺伝子の単離と解析、日本生物工学会(2002)
- 麹菌遺伝子情報に基づく清酒劣化臭の発生防止、日本生物工学会(2004)
- 麹菌A.oryzaeのIsovareryl-CoA dehydrogenase遺伝子の単離と解析、日本農芸化学会(2005)
- 麹菌のムレ香生成酵素遺伝子mreAの転写発現特性、日本生物工学会(2005)
- 清酒麹菌の分子育種に関する研究、日本生物工学会・受賞講演(2005)