使用済み活性炭の再利用、日本酒副産物の新たな活用 酒造業から畜産業へつなぐ循環モデル
酒造りで生まれる「処理後炭」に新たな価値を見出す
日本酒製造では、上槽後の日本酒の清澄化や香味調整を目的として、活性炭処理が広く行われています。使用後の活性炭(以下、処理後炭)は含水率が高く、堆肥化効率も低いことから、多くが産業廃棄物として処理されてきました。
白鶴酒造では、この処理後炭を酒造副産物として捉え直し、新たな価値へと転換する取り組みとして、牛用飼料への活用に着目しました。本研究は、酒造業と畜産業、そして環境をつなぐ循環型社会の構築を目指すものです。
活性炭は、体内の不要物を吸着し腸内環境を整える作用を有することから、古くより家畜への利用事例が知られています。白鶴酒造では、兵庫県内の畜産農家および関連技術機関と連携し、黒毛和種肥育牛および子牛を対象とした給餌試験を実施しました。
1.悪臭成分の大幅な低減
処理後炭を牛に与えた結果、飼養環境の改善につながる効果が確認されました。とくに、悪臭成分の抑制において顕著な成果が得られています。
糞便由来の主要悪臭物質である硫化水素およびメルカプタン類を測定したところ、処理後炭の給餌により、硫化水素は87%、メルカプタン類は92%低減しました。
さらに、処理後炭を給与した牛の糞を含む敷料について、におい強度の評価を行った結果、敷料中への処理後炭2%相当の給餌で約20%、4%相当の給与で約50%のにおい強度低下が確認されました。
悪臭の低減は、牛舎内の作業環境の改善や生産者の負担軽減に加え、周辺環境への配慮にもつながることから、持続可能な畜産の実現に向けた有効な手段として期待されます。
2.腸内細菌叢の多様性向上
肥育牛を対象とした腸内細菌叢解析の結果、処理後炭の給餌量の増加に伴い、腸内微生物の多様性(どれくらいの種類の微生物が存在するか)を示すα多様性指数が有意に上昇することが確認されました。
腸内細菌叢の多様性は、飼料の消化性、免疫機能の安定化、さらにはストレス耐性など、動物の健康状態全体に影響を及ぼすことが知られています。本試験の結果は、処理後炭の給餌が牛の健全な腸内環境の維持を支援する可能性を示しています。
まとめ
処理後活性炭は全国の酒蔵で発生しており、その多くが廃棄されることで環境負荷の一因となってきました。白鶴酒造による処理後炭の再利用は、こうした酒造副産物をアップサイクルすることで、清酒製造業における廃棄物削減と、畜産農家が抱える環境課題の解決を同時に目指す取り組みです。
本技術は特許を取得しており、白鶴酒造では本取り組みを自社にとどめることなく、業界全体へと広げていくことを目指しています。
学会発表
- 清酒処理後活性炭の畜産飼料としての評価、日本醸造学会大会 (2023)
- 黒毛和種肥育牛への清酒処理後活性炭給与による糞臭及び腸内細菌叢への影響 (2025)
- Utilization of used activated carbon from sake processing as an unutilized resource for animal feed, 日本農芸化学会大会 (2025)
登録特許
- 特許第7712328号、飼料用組成物及びその製造方法、飼料、家畜への給餌方法、並びに家畜の飼料に対する嗜好性向上方法