酒米を蒸す間、大釜を覆う布は強力な蒸気で、 勢いよく張り上げられます。 見守り続けた釜屋が蒸し上がりを告げると、 百度近い蒸し米は、手際よく小分けにされます。 それを蔵人総出でカゴに移し替え、 素早く冷やすために、 小走りで一気に運び出します。 酒づくりは温度、そして時間との 闘いといわれるその一端です。
ここ一番の大仕事に蔵はますます活気づき、 放たれる熱気は、冬の朝を一変させます。 ひとりひとりがなすべきことを理解し、 ひとつにつらなる動きは、 まるで意志を持った生き物のようです。 そして蔵人たちの奏でるハーモニーは、 酒の味わいへと伝播していきます。 和醸良酒(わじょうりょうしゅ)、よい酒は和をもって つくられるといわれる所以です。